音楽教育
僕は中学一年生から中学三年生の夏頃まで、父親の転勤でアメリカのサンフランシスコに住んでいました。
現地の中学校、高校に通っていたのであります。(アメリカは小学校が5年、中学が3年、高校が4年なので、日本の中3はアメリカでは高1だった)
アメリカの中学校では、中学1年生の時に楽器を一つ決め、必ず吹奏楽のバンドに入り、授業として音楽を経験します。
しかも楽器は学校が貸してくれます。 中学の3年間、バンドを通じて音楽を学ぶのです。
金管楽器、木管楽器、打楽器、鍵盤楽器など、選べる楽器は多岐に渡ります。
なぜアメリカではこんなにも音楽教育が盛んなのでしょうか?
ワシントンDCにあるケネディ・センターは音楽に限らないアートを学ぶ意義と利点について、次のような点を挙げている(以下引用)
アートを学ぶ意義と利点について、次のような点を挙げている。
・アートは多様な学び方ができるため、多くの子どもに関わってもらうことができる。
・アートを通じて、曖昧な概念をより明確で分かりやすく捉えることができる。例えば算数や数学に出てくる「左右対称」「反転」「回転」などの概念は、ダンスや身体を動かすことで実感できる。また人文科学系の科目では、アートと世界の文化を同時に学ぶことで、我々が住む世界の多様さを理解することができる。
・アートは生きるために必要な力、たとえば批評力・創造的思考力、問題解決能力、共同作業する力、持続力を養うことができる。
・アートの体験を通じて、認知・感情・精神運動を司る神経経路を築くことができる。
・アートは学校の学習環境を協働と発見の場に変えることができる。
要は、音楽の表面上だけではない潜在価値について大きな理解があるということです。
それに対して日本の音楽教育はどうでしょう?
僕の場合は小学校でリコーダー、お琴、中学校ではギター、ピアノなどで、日本の童謡の曲などを学びました。
もちろん楽器は選べなかったですし、演奏形態もアンサンブルはなく、すべて一人で演奏する授業でした。
この違いです。
アメリカでは幼少期に実に幅広い楽器、音楽のジャンルに触れることができ、音楽の最大の魅力ともいえるアンサンブルを経験することができるのです。
これはつまり、人間がランダムで持つミュージシャンの因子を目覚めさせることにも繋がります。
中学・高校で音楽に目覚めた学生達は、音楽の道を志します。
「音楽で食っていく」なんていう現実的な考えは無いにしろ、純粋に「音楽がやりたい」気持ちで、音楽の大学、専門学校などへの進学を考えるわけです。
ここでも日本とアメリカで大きな違いが出てきます。
日本では音楽を志す学生の弊害がたくさんあるんです。
1つは「お金」です。
一流を目指すのならば、一流の楽器を揃えなければなりません。
楽器にもよりますが、大体楽器というのは高いです。
維持費や、修理代もかなり高くつきます。
また、音楽の専門学校や音大は学費が非常に高いというイメージがありますが、実際高いです。
専門学校であれば年間約200万円以上、音大ならば4年で1000~2000万円が相場でしょう。
「これだけの学費を払って、果たして回収できるのか?」
ミュージシャンのギャラが細っている現代において、膨大な学費を回収するのは容易ではないでしょう。
奨学金を借りたとしても、毎月のローンを稼ぐのも大変だと思います。
このような現実を踏まえ、莫大なローンを背負ってまで音楽の道に進む決断は、多くの人にとって難しいでしょう。
これに対しアメリカでは、奨学金のシステムが日本より発達しており、才能のある学生にはかなりの奨学金が与えられます。
しかも返済免除の奨学金です。
ボストンにあるバークリー音楽院では、学費全額免除に加え、生活費まで支給される奨学金があります。
才能、実力のあるミュージシャンはノーリスクで学ぶ機会を得ることができるのです。
結論:アメリカでは義務教育の段階から音楽教育が充実しており、音楽の楽しさを知ることができる。その結果音楽に目覚めた学生の中から優秀な者には更なる学ぶ機会が用意されている。